よく行くピザ屋のディストピア感が好きです

どうも、くまきちです。

最近、自炊する気力が無く、スーパーの惣菜も飽きたので近所のピザ屋さんのお世話になっています。

直接取りに行くと半額ですから、お店まで行って注文してピザが作られている工程をのんびりと眺めています。

そこのピザ屋さんの廃頽的な雰囲気がけっこう気に入っています。

ピザ屋はどこも似たような雰囲気を持っていますが、近年の不況からか、はたまた元からそうなのか、このお店は特別です。

このお店は入り口から奥まで完全に見渡すことができるのです。遮るものは宅配に使うバッグが山積みにされている大きなメタルラックだけ。

なのでピザを作る工程も全て見えます。生地を容器に入れて伸ばすところ、伸ばした生地に穴を開けるところ、ソースを塗るところ、具材をちりばめるところ、チーズが振りかけられるところ。

一応、使い捨てのビニール手袋を使っているけど、食材以外にあちこち触っているところも全部見えます。

それを見て不衛生だなんて思いません。

食品衛生の勉強をしたことがあるのでピザができるまでの短時間で細菌が繁殖しない事も知ってますし、オーブンで焼かれれば殺菌されることもわかります。

では、何を私は見ているのか。それは店員さん達の表情や行動です。

なけなしの笑顔で注文を聞いてくれた店員さんは、一瞬で真顔に戻って厨房に立ちます。

壁には「笑顔、挨拶、元気」みたいな張り紙が貼ってあります。でも、店員さんは真顔で黙々とピザを作ります。

狭い店内に限界まで効率よく詰め込まれた厨房設備。汚れた壁紙。コンクリ打ち放しの床。それらを照らすにはやや明るさの足りない蛍光灯。

聞こえるのはオーブンの稼働音と大型冷蔵庫のコンプレッサーが振動する音だけ。

とても食べ物を作っている空間とは思えない冷たい空気が覆う店内。漂うディストピア感。とても日本的な雰囲気を感じます。

掲げられた「笑顔溢れる職場」というスローガン。対照的に疲弊した現場。上と下との意識のズレ。

大きな廃墟でも見ているようような気分になります。この雰囲気が訳もなく好きです。

疲れてるスタッフの顔を見ると妙な仲間意識すら感じます。

ピザの出来上がりを待っているとデリバリーに出ていたスタッフが帰ってきます。

「あっ、いらっしゃいませぇ。」と私に一瞥し、「お疲れ様でーす。」と言って奥に消えて行きます。

どちらも同じトーンで発せられます。思わず「お疲れ様です。」と言いたくなる。そんなトーン。

カウンターの横には大きな地図。そこには「私は、一時停止を確実にし、安全運転をし、笑顔でお届けに行って参ります。」みたいな行き帰りの意識付け標語が書いてあります。

一体誰がこんなこっぱずかしいセリフ考えるのだろう。一度として聞いたことない。

唱和されない意識付けの標語ほど非生産的な物はない。それでもお偉いさんが来たら言わされるんだろうな。かわいそうに。

さっき奥に引っ込んだスタッフさんはすぐに戻ってきて次の宅配先を調べています。

次の宅配先を調べ終わったスタッフさんは「行ってきあーす。」と言い、奥からは「うーす。おつかれーっす。」と返ってきます。

行き帰りの口上が聞ける日が来ることはきっとないでしょう。すれ違いざま、スタッフさんが会釈してくれました。帽子の下には疲れた笑顔。

あの人は一体どれくらい働いて、いったいどれくらいの収入を得てるのかと思考が巡ります。きっと自然と笑顔が溢れるほどはもらえてないのでしょう。なんだか侘しさまで感じます。

そんな事を考えているうちに私のピザが出来上がりました。店員さんが弾切れ寸前といった感じの笑顔で手渡してくれます。

Mサイズのピザ1000円。このピザの安さの向こうにあの廃頽的なディストピアがある。

それでも焼き立てのピザは旨い。手間を減らしても味を落とさない技術の進歩と手間として減らされる人件費、この1枚のピザに日本の縮図が込められている。そんな気がする。

書いていたらまたピザを食べたくなってきた。やっぱり旨いからまた買いにいこう。

それでは、Bye for now~♪